その30万円もする新しいマシンの名は"VX2000"。その当時最新の3CCDデジタルビデオカメラ。
今までのデジタルビデオカメラの映像と比べると群を抜く明るさを持っている。
今まで真っ暗で何を撮影しているか良く分からなかったスポットも、へたすりゃ肉眼よりも鮮明に見える程だ。
しかし、この時点の俺はまだウルトラフィッシュアイの存在をしらなかった。
なぜならウルトラフィッシュアイは米産のレンズメーカーで直接アメリカで買うか、
巧みな英語を使って通販するしか方法がなかったから。
その存在を知らなかった俺は、当時憧れだったプロスケーターの先輩達の撮影に付いて行くようになり、ウルトラフィッシュアイと
出会う事になる。初めてウルトラフィッシュアイの映像を自分の目で、ファインダーを通して見た時の衝撃を今でも鮮明に覚えてる。
俺んちの近所にあるレッジで、今でも俺が兄貴と呼べる偉大な先輩によるB/S Kグラインド。
今まで見た映像の中でダントツに格好良かった。
その夜すぐに仲間を集めてウルトラフィッシュアイの事を話し、またお金を貯めていつか手に入れたいと盛り上がった。
今では値段が大分上がってしまったが、当時は9万円ぐらいで買えたレンズ。4〜5人で割り勘すれば、すぐに手を出せる値段。
その時もたまたま俺の親父が映像制作会社と取引があったため、そこを通してアメリカから購入することが出来、
案外簡単に手に入れる事ができた。
レンズが来る間の一ヶ月間はクリスマスを待ちわびてる子供のような感覚で、家に届いた時は早速装着して机やテレビなんかを移してそのワイド感に浸ってた。
それから数年、VX2000&ウルトラフィッシュアイというコンビでローカルのビデオを何本か作るうちにやっぱり何かしっくりこなかった。
機材は完璧にそろえたはずなのに、俺が一番好きな映像とは何かが違う。俺はまず、先輩達の作るビデオを研究してあることに気付いた。
このビデオの中に俺が好きな映像としっくりこない映像がある。しっくりこない方は今現在、自分が撮っている絵にかなり近い。
しっくりくる方は俺が求めてる映像の質感だ。
それからは先輩達に俺が思う疑問をぶつけてみると、答えは案外すぐ出た。
"ウルトラフィッシュアイにはVX2000用とVX1000用がある。"
VX1000?なんだそりゃ?聞いた事無いぞ。一番良いのはVX2000じゃなかったのか??
そんな疑問を抱きながら、俺の脳内スコープにはVX1000&VX1000用ウルトラフィッシュアイはすでにロックオンされていた。
ただもう一つ気になった事は、先輩達がなぜVX2000で撮影していたか。
理由はこうだ、VX2000はバッテリーの持ちが以上に長く、夜の撮影に長けている。強度も増し壊れにくく、VX1000には装備されていない
液晶ディスプレイが搭載され、映像の確認が十分に出来る事。
以上の理由で先輩達はVX2000を選んだようだ。
そんな話を先輩達が構える事務所で聞いてると、すぐ側にある機材BOXから壊れたVX1000とウルトラフィッシュアイが顔を覗かせていた。